長靴をはいたエゴ


もう1ヶ月近く前のことになりますが、僕が良くチェックしている、友人が運営する某音楽サイトの掲示板にこんな宣伝書き込みがありました。

こんにちは!僕たちはxxxxxxというドイツのバンドです。******のヨーロッパツアーでいくつかの前座公演を終えたばかりです。日本語のサイトを立ち上げたので、ぜひ遊びにきてください!

www.xxxxxx.com


一応バンド名は伏字にしておきました。2番目のバンド名*****にはGUNS N' ROSESの初代ドラマーであった某氏が率いている(らしい)バンドの名前がありました。


まあ、書き込んだ人がドイツ人であるということを除けば、良くある宣伝書き込みです。管理人さんもこの掲示板に集まる人も生憎ハードロックに余りが興味が無い人たちであったらしく、この宣伝書き込みは虚しく馬群に沈んでおりました。


「せっかくドイツ人が頑張って日本語で書き込んだのに、かわいそうに」と思った僕は、(余計なお世話と知りながら)この宣伝書き込みに以下のようなレスを付けてみることにしました。

日本語サイトへ遊びに行ったんですが、Picsのページにあったドラムの人(パトリックさん・仮名)の写真が谷村新司にソックリで凄いと思いました。これは日本で売れるに違いないね!がんばってください。


んー、素敵。どうせ宣伝書き込みをしたドイツ人は二度とこのサイトには来ないだろうし、谷村新司とか言われても気分を害するどころか、訳がわからないに違いない。
一方で僕のレスを見たこの掲示板に集う人たちは「どれどれ、本当に谷村新司に似てんのか?」とURLをクリックするに違いないわけで、その中のひとりでもxxxxxxさん達の音楽に興味を持てば、彼らの苦労も報われるわけで。


我ながら良い仕事をしたと悦に入りながら再度掲示板を眺めることしばし。僕はあることに気が付きました。


それは、さきほど引用した書き込みをしたドイツ人の名前がパトリック(仮名)さんであること。
僕は漠然と、このバンドの中に日本語ができる人がいるのか、或いは彼らの熱烈なファンである日本人が本人を装って宣伝書き込みをしているのだと思っていたのですが、ひょっとすると、上の書き込みをしたのは谷村新司その人であるかも知れないわけです。


イコール、谷村新司は日本語ができる子。


少し慌てた僕は、パトリックさんが気を悪くしないよう、万が一に備えて、後からもう1行レスを足しておくことにしました。

わぁ、今この書き込みした人の名前見たらパトリックって書いてあるじゃん。これどう見てもドラムのパトリックさんじゃね?


日本語できる人なのかな。上の俺の書き込み見て「誰が谷村じゃコラ!」とか怒ってたら怖いよね。


パトリックさん、さっきは言い過ぎてごめんなさい。谷村新司じゃなくて、谷村新司の物真似をしてる人に似ていると訂正します。本物よりはちょっとカッコいいんだよ。ほんとだよ。


よし、完璧だ。まあ、まさか宣伝書き込みした奴がまた掲示板に戻ってくるってことは無いだろうけど、これで他の掲示板見てる人もなんとなく笑えただろうし、俺いい書き込みしたよ。今日も楽しいインターネット終わり。


そう思って安らかな眠りに就いた僕は、翌朝戦慄のメールを受け取って背骨を震わせることに。当サイト『時計仕掛けのグランジ』のメールフォームに、こんなメールが届いていました。

(以下、全てローマ字だったものをカタカナに直しました)


コンニチワ ぱとりっくデス イマ キミノ BBSニ書イテアル めっせーじヲ 読ミマシタ デモ ボクハ ニホンゴヲ スコシダケ 読メルノデ ソノ メッセージヲ Englishデ 書イテ E-mailデ送ッテクレマセンカ アリガトウ


PS. ワルイ ニホンゴヲ ゴメン ネ


....本人かよ!
どうも件の掲示板に僕が入れておいた自分のサイトへのリンクを辿って、わざわざお礼のメールをくれたようです。....谷村新司の意味もわからずに。


自慢じゃないけど英語は割と得意なほうなんですが、英訳とかできるわけない。谷村新司とかどう訳すねん、仮に訳せたところで俺はそれを訳して彼に何を伝えたいねん、という話。


結局未だに返事が書けていません。ひょっとしたら今頃パトリックさんは日本語の知識と日本の友人を総動員して僕の書き込みのドイツ語訳を試みているのかも知れません。あの、メールのお返事が書けなかったのは、確定申告とかで忙しい時期だったからなんです。なんですよ。


まじな話、誰がどこで見てるかわからないので、今後インターネットで軽率な行動は慎もうと思います。皆さんも、気をつけて。


ワルイ ニホンジンデ ゴメン ネ