Don't Believe The Hype

賞味期限切れで中りそうなネタですが、「マイケル・ジャクソンの真実!」
いろいろと考えさせられることも多く、面白かったです。


この番組は最初、イギリスのTV局が故ダイアナ妃へのインタビュウで有名なジャーナリスト(名前忘れた、インド系の人)によるマイケルの密着取材を放送、その後、その番組内容に対し「事実を捻じ曲げてる!」とマイケル側が抗議したため、今度はアメリカのTV局が(マイケル側からの干渉は一切なかったと力説しながら)反論番組を制作、放送したものです。


確かに同じインタビュウ・ソースを使用しててもその編集によって、マイケルに対する印象が大きく変わるものなんだなぁと驚愕しました。「救いようのない不気味なピーターパン」が「ちょっとお茶目な変わり者のピーターパン」に変わったもの! だけど「事実を捻じ曲げてる!」とまでは思わなかったですね。制作者側がマイケルのインタビュウから何を感じ、何を訴えようとしたか、そのテーマによって番組内容が決定付けられた気がしました。


考えてみると当たり前のことなんですけど、メディアが伝えられる真実には限界があるわけですよね。例えば、「10万人反戦デモ」。彼らが訴えてることの本当の真実を掴もうとしたら、10万人全員のインタビュウが要るわけです。「反戦」と「反米」の件だって、もしかするとたまたまブッシュの人形を燃やしてる映像を捉えてただけなのかもしれない。


そもそも真実はひとつではないわけで、同じ客観的事実からでも人によってまったく解釈が異なる。メディアによる報道は、そこにカメラマンの目線や、リポーターの視点、制作者が視聴者に訴えたいテーマというものが含まれているわけだから、端から完全な客観的事実ではないわけですよね。これは映画や小説の翻訳に似てるかもしれません。見た人の数だけ感想が存在するものに翻訳者の主観というおまけまで介在してる。


最新のアルバムチャートでディクシー・チックスは先週から売上げを50%落としました。親ブッシュ、反ブッシュ側、別にどちらのメディアでもいいですが、もしかすると「ディクシーはセールスを大きく落とした。例の件が関係してるかもしれない」と報道するところもあるかもしれません。確かに「彼女達がセールスを落とした」のは客観的事実です。でも「大きく」は主観によって異なるし、「例の件が関係してるかもしれない」という誰にも証明することの出来ない主観的推測には報道する側の意図が含まれています。


僕がもしこの件についての分析を頼まれたらこう応えます。「この2ヶ月間ディクシー・チックスのアルバムが好調だったのは、シングル"Landslide"がポップ・チャートでヒットし、従来のカントリー・フィールドを超えたクロス・オーバー・ヒットになっていたからです。しかしシングルは3週間前に赤丸が消え、今週のチャートではトップ20からも消えました。今週彼女達のアルバム・セールスがダウンしたのはシングル・ヒットによる需要が消えたからだと思います」。


僕のこのコメントには「ディクシーのアルバム・セールスの下降は今回の一件とはまったく関係ないんだよ! 何でもかんでもそれと結びつけるな! バーカ!!」というニュアンスが含まれています。


これは僕に限らずメディアも一緒なんだろうと思います。客観的事実を伝えてはいるんだけれど、それを伝える際の手法によって、そのソースに発信者が受信者に訴えたい何らかのメッセージを込めている。例えば音楽ニュウスを発信してる企業は、(一概には言えませんが)反ブッシュ、民主党寄りの企業が多いのも事実だと思います。そこに「ブッシュ、或いはブッシュ支持者はこんなに危険な奴らだぞ!」というニュアンスを含ませることはあるでしょうね。普段だったら記事にしないネタでもトップ項目で取り上げてみたり。


メディアの情報を100%鵜呑みにしてしまうことは大きな危険性をはらんでいます。これはメディアが嘘を伝えているという意味ではなく、そもそもメディアは100%の真実を伝えられるようには出来ていないという意味において。客観的事実から真実を判断することが出来るのは僕ら自身だけですから、ニュウス・ソースがどのメディアから、どんな意図で流されてるかを見抜く目を養い、そのソースについての他のメディアの情報をチェックするなどして、その中から客観性を見出すより他ないのかもしれません……


……と、ピーター・ジェニングスが言ってました!!


ん!? 鵜呑みにしたけど、何か?