震動開脚すれば火も股涼し

先週気付いたんだけど、うちの職場、どうも上司(41歳バツイチ子持ち)と事務の女の子(23歳)がこっそり付き合ってるくさいです。今日すごく生々しい現場を見てしまいました。


一応本人の名誉もあるので(普段は役職名で呼んでいるのですが)、仮にこの上司を「Aさん」と呼んで話を進めることにしましょう。以前は独身貴族ということで気前良く僕たちを飲みに誘い、奢ってくれることで有名だったAさんも、若い女の子の魅力にすっかり骨抜きにされたのか、最近めっきり付き合いが悪くなって。
先週金曜日に行われた飲みにもAさんは顔を出してくれませんでした。


あーあ、Aさんのこと尊敬してたのになあ。
若いってとこ除けば大して可愛くも賢くも見えないあんな子に夢中になるなんてガッカリだよな。最低。


以下、そんな僕と同僚さんの喫煙室での会話。


「しまけんさん、金曜日飲み行ったんですか?」
「ああ、行った行ったー。Aさんが来ないから新人くんの飲み代全部俺の奢りだっつの。マジありえねー。吉井くんも来てくれりゃ良かったのに」
「へー、そりゃ申し訳ない。しかしAさん最近付き合い悪いっすね」
「○○ちゃん(事務の子)に夢中なんじゃねえの?そういえば金曜○○ちゃんも来てなかったしさ」
「まじで?二人でデートだったんすかねー。ひょー」


なんて話してたら、噂のAさんが喫煙室に入ってきました。


「あ、お疲れさまでーす」
「お疲れさまでーす」
「お疲れー」
「そういえばAさん、なんで金曜飲み会行かなかったんですか?しまけんさん、大変だったらしいっすよ」
「そうそう、俺飲み屋からAさんに電話したんですけどね」
「ああ、ごめんごめん、息子が急に熱を出したって別れた奥さんから電話があってね。今度の飲みは必ず行くよ」
「え、それは大変でしたね。息子さん、お幾つでしたっけ?」
「もう来年中学だよ。受験がどうとか最近…」


そう言いながら胸ポケットから煙草とライターを取り出したAさんだったのですが、何かに気が付くと慌ててそれをまたポケットにしまい、まるで逃げるかのように「んじゃ、ちょっと用事を思い出したんで」と言い残して喫煙室から出て行ってしまいました。


「…なあ、吉井くん、今のライター見たか?」
「あ、やっぱりしまけんさんも気付きました?ばっちり見ました」
「…わかりやすい人、だなあ」
「…ですね。なんかガッカリというか、微笑ましいっつうか」


Aさんが胸ポケットから取り出したのは、大きな字で「HOTEL XXXX」と書かれた、ラブホ備え付けとおぼしきライターだったのです。


「あれ、やっぱ飲み会さぼった金曜日に行ったホテルですかね」
「…だろうね」
「はー、やってらんねー」
「…ムスコが急に熱を、ねえ」
「ぎゃははは!そっちの息子かよ!やべーおもしれー!これは早速みんなに教えないと!ぎゃははは!」


喫煙室でのこの会話から数時間。
さっき他の同僚を「晩ご飯食べにいこうよ」と誘ったら、爆笑しながら「いやあ、わりぃ。ムスコが急に熱出しちゃって」とか言って断られたんですけど。


なんか意図しないところで流行語を作って、一気に噂を広めてしまったみたいです。Aさんごめん。最低なのは僕のほうでした。からかう気なんて無かったんですよ。さっきはホントぼーっとしてて、思わず酷いこと言っちゃって。熱があったのかな、僕の息子に。