21st Century 戴宗

明け方までチャンピオンズリーグの決勝を見ていたので今日一日眠くて眠くて、ぜんぜん仕事になりません。まあ、思いっきり自業自得なんだけど。


昼過ぎ、ちょっと外に行く用事があって、歩いて行ける距離なのに疲れてバスに乗ってしまいました。ところが思いのほか混んでて座れず。あー、そういやこの時間混んでるんだっけ。「座りたい」と思ったことより「バスに乗れば無条件に座れる」と信じ込んでいたことに疲れを感じるなあ。


そう思っていると2つほど前の席が空て。座ろうとしたら停留所から妊婦なのか単に太っているだけなのか微妙な女の人が乗ってきたの。あ、と思って座るのを自粛。ところがその妊婦容疑者がのんびり小銭を財布へとしまっている間に、彼女に気付かなかった大和朝廷ふうドレッドのお兄ちゃんが空いた席に腰掛けてちゃって。


なんとなくずっとそっちを観察してると大和朝廷が目の前に立っている妊婦(疑)に気付く。お尻をもじもじさせて席を譲ろうか迷っている様子。あー、多分このひとも彼女が妊娠してる人なのか判断しかねてるんだろうなあ。良くわかんないけど、ただ太ってるだけの人がいきなり「どうぞ」とか席譲られたら、結構傷つくのかも、だし。


すると突然大和朝廷が起立。「どうぞ」も何も言わず、携帯メールでもきたような素振りで反対側の通路、僕の近くへ移動(ほんとうに携帯メールだったのかも知れないけど)。あー、わかる、僕でもそうするよ。あんた賢明だ。新聞の投書欄とかには載らないシャイなやさしさだよねー。


でも肝心の妊婦(疑)がぜんぜん空いた席に座らないわけ。
目の前だよ?座っちゃえよ。


とか思ってると、どうやら座席の幅と自分のお腹を見比べているらしい。がーん、あんたその隙間にお腹入らないのかよ。盲点でした。でもここから見る限り、ちょっと頑張ったら充分入ると思うけどなあ。荷物も重そうだし、ダメもとで試してみれば良いのに。


なんて空いた座席と埋まったお腹を交互に見てたら、僕の隣にいた大和朝廷も携帯のディスプレイを見てるフリしながらお腹の様子を窺ってやんの。2人でお腹が座席のほうへと逡巡するたびに「ほら、座れ、座れよ」と首を伸ばしたり、手を微妙に動かして、三塁コーチのようなサインを妊婦(腹が近鉄の中村)に送ったり。


動きがシンクロしてたのに気付いたのか大和朝廷がチラッと僕のほうを見て、目が合う。「ああ、座らないんすよね、あのひと」「見てた、俺見てたよ、あんたの小さな親切を」昨日の決勝では見られなかったネドベドデルピエロばりのアイコンタクトを交わしてヒゲのサラリーマンと大和朝廷に友情が芽生えた瞬間、妊婦(中村)が果敢なスライディングで座席へホームイン。


おお、やった、やりましたよ。
別に僕は何もしてないんだけど、こういう小さな親切の連鎖っていいよねー。とかささやかな幸せに包まれてみたり。こんな風景が見れるなら、たまには疲れてバスに乗るのもいいかな。人の見えない親切に気付けるってことは、仕事で体がいくら疲れててもまだまだ心は疲れていないって証拠だもの。


ちょっと元気になりました。


「次は○○ー。○○病院へご用の方はこちらで…」



完全に乗り過ごしてんじゃん。
クソ熱いなかスーツでバスの停留所3つぶん歩いた。もう元気とか無い。