チャンポンチャン

なんだか香港や中国じゃ新型のおっかない肺炎が随分流行ってるらしいじゃないですか、SARSとかいう。香港に住んでる友達の話じゃ、電車やバスの中で少し咳払いをしただけでも白い目で見られるらしく。もちろん全員マスク着用。


そんなご時世なのに、薄情な僕の会社は社員に容赦無く海外出張を命じてきます。
3日前、僕の同僚後藤さんが出張へと旅立ちました。
空港に近付くのも少し躊躇われる時期に、中国、しかも香港に近い広東省への出張。本当は先週くらいに行くはずだったんですが、一応SARSの流行も考慮して1週間の予定が3泊4日に短縮に。それでも前々から予定が入っていたのでこれ以上伸ばすわけにもいかず、結構落ち付いてきたらしいってことで恐る恐る出発。


みんなイラク戦争の従軍記者を見送るような感じで「おみやげ買ってこなくて良いからね」「ばい菌付いてるかも知れないしな」「帰ってきたらしばらく有休取って出てこないで」「むしろこのまま退職して」などと、口々に後藤さんを心配しながら送り出したんです。


でね、一応用心の為にマスクは最低限持っていったほうが良いんじゃないかって話になりまして。コンビニとかでガーゼのマスクなら3枚100円とかで売ってるんだけど、あれじゃさすがに心配だし。同僚一同で花粉症対策のマスクを渡すことにしました。結構頑丈だし、なんかばい菌も入りそうにないじゃん。


「おお、なんだかんだ言ってみんな優しいな。ずっとこれ付けとくよ!」
なんて、後藤さんも喜んで花粉症マスクを持って旅立っていった、のですが。


今日会社のテレビで夕方のニュースを見ていると「SARS対策にはどのマスクが有効なのか」という非常にタイムリーな特集をやってまして。
普通のガーゼマスクと花粉症マスク、防塵マスクという市販されている3種類のマスクと今回SARS用に特別に開発されたというマスクの合計4種類が、一体どれほどSARSウイルスを防いでくれるかっていう比較実験特集。


以下、実験に協力してた医者みたいなひととアナウンサーのやり取り。


医者
「この特殊マスクなら空気中にあるSARSウイルスの実に98%を防ぐことができます」
アナウンサー
「ほう、でもこのマスクは一般ではなかなか入手できないんですよね?」
医者
「そうですね」
アナウンサー
「市販マスクではどういった効果が期待できるんでしょうか」
医者
「えーっと、防塵マスクですと約85%、一般的なガーゼマスクですと20%くらいはウイルスの侵入を防ぐことができます。こちらの花粉症マスクですと、ふっ(鼻で笑いながら)、用途が全然違いますからね、防げるウイルスは全体の2%くらいでしょうか」


他に誰もテレビを見ていなかったことを確認して、僕はそっとチャンネルを変えました。明日帰ってくるけど、しばらく後藤さんには近寄らないことにします。