鰹発動

特に日記で書きたいような話も無いので本日は有り難くも「時計仕掛けのグランジ」に寄せられた感想メールに公開返信を試みたいと思います。
なんか返信したんだけどダミーアドレスだったようで返ってきちゃったんでね。


えっと、送られてきたメールの主旨は前回更新のFOO FIGHTERSクロスレビュウに対して「バンドのことを良く知りもしないで偉そうに批判しないで欲しい」というものでした。


あと「好きな作品じゃないなら感想とか書かなければ良いじゃないですか」といった文章のあとにデイヴ・グロールがこのアルバムを作るのにどれほど苦労したか、あのアルバムに対してFOO FIGHTERSがどれほどの思いを込めているか、といったことが熱く語られておりました。お蔭で勉強になったよ。どうもありがとうございます。


とりあえず真面目に返信すると、あなたは「良く知りもしないで」という言葉を良く知りもしないで使い過ぎじゃないでしょうか。


おそらくあなたはFOO FIGHTERSの熱心なファンなのでしょう。
僕もライヴに足を運んだくらいですからそこそこファンだと自覚しているんだけど、多分あなたから見れば「まだまだ足りない」ファンなんだろうね(笑。


ただ僕はアルバムの感想を書くのにバンドのことを良く知る必要など全く無いと思うんですよね。好きである必要すら全く無い。


勿論メンバーの名前が間違ってるとか事実を誤認したまま批判が展開されているといった物理的なミステイクがあるなら、それは「良く知りもしないで」と糾弾されて然るべきかと考えます。しかし、失礼ながら、あなたの仰る「良くも知りもしないで」というのは後の「メンバーへの思い入れ」や「デイヴ・グロールに対するあなたの個人的な愛情」とブレンドされて出て来た言葉なんじゃないかと推察いたします。


そんなの全然関係無いじゃんね、音楽に。


そりゃバンドがアルバムを作ったときの裏事情とか知ればそのアルバムにも愛着が湧くんでしょうけど、それはあくまで「音楽をより楽しむ」ための肴であって、該当音源を楽しむための必須条件であるはずがない。あってはいけないことですよ。


音楽聴くのにいちいち「この歌詞を書いたときアンソニーはガールフレンドと大変な時期でね」とか「ジョンはこの頃東洋思想に傾倒していてね」とか頭に入れてから予習してからではないと批判の資格が無い、と本当にあなたが信じておられるのなら、同様に「あのレビュウを書いたとき僕がガールフレンドとどんな時期だったか」とか「しまけんが何思想に惹かれていたか」にも配慮して貰っても良さそうなもんだぜ。笑わせやがる。


好きなものだけ感想を書くっていう発想がまず寒いと思います。
根本的に金を払って購入したものを批評している以上、創作物という点でフーファイのアルバムと(それが僕の感想であれあなたの感想であれ)レビュウは同じ次元にあるものですよ。「紹介」とは違うんだしね。


勿論絶対的なクオリティや影響力という部分で素人の感想とメジャーレーベルに契約を持っているミュージシャンの音源では天と地の開きがありますけど、批評ってのを何か二次的なものだと勘違いしたり「好きなアーティストの紹介を書かせていただく」といった謙虚な発想でやるべきものだと考えているなら、それこそ「良くも知りもしないで」「好きでもない僕の批評の批評なんかしなければいいのに」とアドバイスを送りたいですな。


同じベクトルで「俺は音楽を愛しているから」とか「この音楽を演奏してるやつらには音楽に対する愛を感じない」みたいな物言いにも違和感を覚えます。


愛してたらどないやっちゅうねん。
や、それ自体は勿論良いことなんでしょうけどね。批判的なレビュウを書いたら音楽を愛してないってか。「音楽を愛している」って言えば聞こえは良いけど、結局それはリスナーの視点であれプレイヤーの視点であれ、音楽をダシに自分語りしてるだけでしょ。
楽器を自己表現の手段として利用したり、自分の好きなバンドを自分のアイデンティティの一角として利用しているわけで、愛しているかはさておき批判的に何かを語っている人とやっとることは変わらんですよ。


僕もあなたも結局自分の話がしたいだけ。
同じ他者利用の分際で「俺だけはバンドをわかっている」みたいな言い分は余りに見当外れじゃないですかね。親身になってる奴なら他人を利用して良いってことを遠回しに主張してるだけじゃん(笑。


「俺はあいつのことが好きだ。だからあいつの財布から金を盗んでいいんだ」論法かよ。僕に言わないで同じ科白を自分の彼女にでも言ってみなよ。上手くいけば風俗か何かで小銭稼いでくれるかもな。


折角メールをくださったので最後に親身な助言を。


「良くも知りもしないで」といった論法で相手に迫ると、「じゃあ俺のことを良く知ってから出直しやがれ」とばかりに大量に自分語りをされるので(今日の僕みたいにね)、相手を論破したり凹ませたいときの手段としては余りお薦めできません。
多分このケースだと僕が一番落ちこむ返信は「つまんねえレビュウばっか書いてるから俺みたいなつまんない批判メールが来るんだよ、バーカバーカ」とかです。
次回、更なる精進をお待ちしております。


あとdaboyさんと僕は一緒にサイトをやってるだけで音楽批評に対するポリシーなどは全く違いますので、たまには向こうにメールを送られたら如何でしょう。
僕に送るよりは返信されたときの不快感が少ないと思うけどね。


以上。
こういう返信にはこのサイトで掲載しているものへの基本的な考え方が詰まっているので、見てくださってる方と共有してみても良いんじゃないかと思って載せてみました。
以降似たような内容の感想メールを頂いた場合はこの日記にリンクを入れて返信できるしね。


こんな書き方をしたら批判にやたら敏感で狭量な怖い男と思われるのかも知れないけど、狭量なのはその通りとしても、多分僕はすごく親切なだけなんだと思う(オチ)。


批判メールへの返信日記にまでちゃんと可愛くオチを付ける素敵な管理人が運営する愛の無い音楽批評サイト、時計仕掛けのグランジを今後もよろしくお願いします。