超醒めの卵

正月休みも終わりということで、出社すると机の上には年末年始に帰省・旅行した人たちの土産物が山と積まれ、ちょっとした展示即売会の様相。


誰々さんの故郷、沖縄銘菓のちんすこうショコラ(まじでか)に誰某さんが旅行した那須高原のブルーベリークッキーにと言われるままに食べていたのだけれど、一番凄かったのはロシア土産のキャビア缶とアムール川で取れた川魚の干物という品物だった。あんた、正月休みにシベリア行くなよ。


こちらとしても「2003年をシベリア鉄道の車内で迎えた男」に対する想定問答集みたいなものは当然持ち合わせがないわけで、それまで「どうでした、ご実家のほうは。お母さんはお元気で?」といった当たり障りの無い会話をしていた展示即売会の住人たちは言葉に詰まって干物の臭いを嗅いだり、キャビア缶に印刷された文字を読もうとしたり(ロシア語。当然読めない)。


「やっぱ寒かった?シベリア?」
「ええ、まあ。シベリアですからね」
「東京も正月は結構寒かったんだよね」
「そうそう、雪が降ったんですよね」
「まあ、シベリアとは比べ物にならないだろうけどね」
「そりゃそうだよ、シベリアだぜ?」


話の凄みが聞き手の理解力を超えて伝わることなど決して無いのだ。