ツーストライクからの共振

学校指定の紺色鞄に白マジックで「EMINEM」と書き込んで満足げな女子高生と友達に向けて「ミニマムアクセス」って言葉を繰り返す小学生に挟まれて地下鉄の九段下を通り過ぎる金曜日。席を替わって欲しそうに三白眼を剥いた丈夫な婆の方を見ないように雑誌に目を落とす。


僕が毎日のように聴く音楽、使う単語、通る場所。
それと同じ音・言・場を共有しているのに、この人達に僕は何の親近感すら覚えない。音楽や言葉が人を繋ぐものだなんて嘘だ。同じ空間で過ごした仲間が?古い幻想だよ。


あの白マジックは何を拒絶していたんだろう。と思いながら雑誌の表紙を不必要なまでに露出して僕は七人掛けの一角を守る。ほら、タイトルを見たかい?お前には用のない雑誌だろ。だから僕に構わないでください。


向かいの席では、腰を下ろしてネクタイを緩めかけたサラリーマンが左右を見渡して慌ててネクタイを締め直している。彼の両隣は二人とも汗にまみれてネクタイを緩めた四十男だったから。死ぬまで差別化がしたい。
みんな。くわのまわりをまわろうよ。